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妊活中から妊娠初期に欠かせないと言われている「葉酸」ですが、どんな栄養素で、どんな働きをするかご存知でしょうか?

「葉酸」は妊娠前から妊娠中にかけて特に不足しがちな栄養素の1つです。妊娠を計画されているかたへ、「葉酸」について分かりやすく解説していきたいと思います。

葉酸とは何か?

葉酸とはずばり、水溶性のビタミンB群の一種です。
ビタミンといえばビタミンAやビタミンCを思い浮かべる方が多いと思いますが、ビタミンB群は体内で酵素の働きを助け、タンパク質や糖質、脂質の代謝などの役割を担っています。

中でも葉酸は細胞の増殖や再生を助け、体の発育を促す働きがあります。細胞が新しく作り出されるときに必須となる栄養素なので、まさに妊婦さんに必要なんですね。また、ビタミンB12とともに摂取することで赤血球の生産を助ける、という造血作用があり、妊婦さんによく見られる症状「貧血」の防止にもなります。

葉酸の由来


最初に発見されたのはホウレンソウからだそうです。葉はラテン語で folium と呼ばれることから葉酸 (folic acid) と名付けられました。その名のとおり、葉ものの野菜に多く含まれています。

葉酸の効果について

葉酸の主なはたらき

主な働きとして大きく3つ挙げられます。

  1. 細胞生成作用:DNAを構成している核酸の合成に必須となる栄養素です。
  2. 造血作用:赤血球を生産します。
  3. 疲労回復作用:アミノ酸やたんぱく質の生成を促進します。粘膜や皮膚を健康に保ちます。

どの作用も健康な身体をつくるために欠かせないですよね。また、女性であれば妊娠期間を問わず、摂取すべき栄養素なことが分かります。

不足するとどうなる?赤ちゃんへの影響は?

葉酸が不足にした場合に引き起こされる症状としては、貧血、口内炎、食欲不振、下痢などが挙げられます。また、特に重要視したいのは、妊婦および赤ちゃんへの影響です。

妊娠初期(4週~12週)は胎児の細胞分裂がさかんな時期であり、この時期に葉酸が不足すると胎児に先天性の神経障害が起こりやすくなります。具体的には「二分脊椎症」や「無能症」などの神経管閉鎖障害の発症リスクが高まると言われています。
このため、厚労省からは妊婦の葉酸摂取が推奨されており、母子手帳にも02年から「葉酸の摂取が重要」との記載が加えられています。

また、授乳期においてお母さんの葉酸摂取が不足した場合は、赤ちゃんの発育に遅れをおよぼすことが指摘されています。

どのくらい摂取すればよい?

厚生労働省が発表している食事摂取量基準によると、成人男女の葉酸の推奨摂取量は1日あたり240μg(マイクログラム)で、妊活中から妊娠初期(~妊娠3か月)にはサプリメントなどを活用し、さらに400μgの葉酸を付加的に摂取することが望ましいとされています。そして妊娠中は、食事による葉酸の推奨量240μg/日に加えてプラス240μg、産後の授乳期はプラス100μgの葉酸の摂取が推奨されています。

成人女性の1日あたりの推奨摂取量
  • 通常: 240μg
  • 妊活中~妊娠初期(3カ月):
    240μg+400μg= 640μg
  • 妊娠中(4カ月以降):
    240μg+240μg= 480μg
  • 授乳中:
    240μg+100μg= 340μg
成人男性の1日あたりの推奨摂取量
  • 通常: 240μg

妊婦の摂取はいつからいつまで?

厚生労働省からは、妊娠の1か月以上前からの十分な葉酸の摂取が推奨されています。このため、妊娠を計画した時点で摂取を始めるようにしましょう。

また、妊娠後は胎児の細胞分裂がさかんな妊娠3か月までは特に意識して摂取することが必要です。妊娠3か月を過ぎるとつわりも治まりはじめ、胎盤も安定してきます。ただ、妊娠3ヶ月をすぎれば全く葉酸を摂取しなくても良いということではありません。普段の食事にほうれん草や豆類、必要に応じてサプリメントを取り入れましょう。

摂取しすぎはダメ?副作用はある?

厚生労働省が提示する1日の上限摂取量の目安は1,000μgとなっています。ただし、これまで「葉酸の過剰摂取による副作用は認められていない」と言われています。
上限基準である1,000μgを自然に摂取できてしまうことはまず無いですし、摂取量を一時的にオーバーしても、葉酸は水溶性ビタミンであるため、過剰分はちゃんと尿に排出されます。

摂取量の上限に敏感になるよりは、まずは積極的な摂取を心がけることが大切です。
ただしサプリメントの場合は食べ物より葉酸の吸収率が高く、他の栄養素が含まれている場合があるため、サプリメントの服用については、定められた用法・容量を守るようにしましょう。

葉酸の摂りかたは?

葉酸の必要性が分かったところで、次に気になるのは効率的な摂取方法ですよね。
日々の食生活での摂りかたやサプリメントの活用についてご紹介します。

葉酸が多く含まれる食べもの

葉酸は、えだまめやモロヘイヤ、ほうれん草などの緑色の野菜に多く含まれます。

■食品100gあたりの葉酸含有量
えだまめ:320㎍(茹でると260㎍)
モロヘイヤ:250㎍(茹でると67㎍)
ほうれん草:210㎍(茹でると110㎍)
アスパラガス:190㎍(茹でると180㎍)

その他にも、海苔やワカメなどの海藻類や、きなこや納豆などの豆類からも摂取することができます。
レバーにも豊富に含まれますが、妊婦にとって摂りすぎ禁物のビタミンAも多く含んでいますのでご注意ください。

なお、葉酸は水・熱・光に弱く、調理過程で栄養を損失してしまうことが多いため、なるべく新鮮な状態で食べることが望ましいです。
また、大量の飲酒は葉酸の吸収および代謝を妨げます。基本的に妊婦の方は飲酒を控えていらっしゃると思いますが、妊娠準備中の方はついつい飲んでしまうことがあると思います。飲み過ぎにはご注意ください。

食べものから摂取する時の注意点

食べ物から葉酸を摂取しても、実際に消化吸収されて身体で働くのは約50%に留まります。頑張って野菜を食べたつもりでも、意外と吸収できていないので、注意が必要です。

なお、葉酸には「ポリグルタミン酸型」と「モノグルタミン酸型」の2種類があります。「ポリグルタミン酸型」というのがいわゆる天然の葉酸を指し、食べものに含まれるのは「ポリグルタミン酸型」になります。これがヒトの身体のなかで、消化吸収されやすいように「モノグルタミン酸型」に変わります。つまり、できることなら初めから「モノグルタミン酸型」の葉酸を摂取できた方が吸収効率が高いのです。
そこで、注目されているのが、「モノグルタミン酸型」の合成葉酸です。これは市販の葉酸サプリメントの主な成分となっています。

サプリメントの活用

食べものから基準量の葉酸を摂取する場合、食材や調理方法を工夫する必要がありますので、それが毎日となるとやはり厳しいですよね。特定の食材ばかりになってしまったり、栄養バランスが崩れてしまったりすることも考えられます。
そこで上手に活用したいのがサプリメントになります。厚労省からも十分な摂取をするためにはサプリメントの服用が推奨されています。

また、サプリメントの嬉しい点として、葉酸以外の栄養素もバランス良く含まれていることが挙げられます。栄養素はお互いに助け合って働いているため、1つの成分だけをたくさんとっても効率よく働くことはできません。
また、葉酸に次いで妊婦が不足しがちな鉄分やDHA/EPAなどを同時に摂れるサプリもあります。

このように、同じ葉酸サプリでも含まれている栄養素は製品によって異なりますので、事前に成分を確認したうえで、自分のニーズに合ったサプリを選ぶことが大切です。

まとめ

葉酸は細胞の増殖や再生を助け、体の発育を促す働きがあります。
妊娠初期は、胎児の脳・神経・心臓など非常に重要な部分が形成される時期ですが、この時に十分な葉酸を摂取することにより、赤ちゃんの先天異常の確率を減らすことが可能です。
また、葉酸は疲労回復や貧血改善のために、妊婦さんでなくても、さらには男女を問わず十分な摂取を心がけたい栄養素です。

基準とされる1日の所要量を満たすために、日々の食生活の中で食材や調理法を工夫したり、サプリメントを取り入れたりすることで、確実な葉酸摂取を心がけましょう。